遺言はどの専門家に頼むべきか?

1 はじめに

今回は、遺言作成はどの専門家に頼むべきか?というテーマについてお話します。

素人の方は、どの専門家が何を取り扱っているのかよくわからないことが多いです。遺言を作成することを誰かに頼みたいと思っていても、それをどの専門家に頼むべきなのか、そして、費用がどのくらいかかるのか気になるところでしょう。

そこで、どの専門家に遺言を頼むべきなのかについて、専門家の業務範囲分野や特徴、費用についてお話していきたいと思います。

これから遺言を作成しようと考えている素人の方に向けた内容になっておりますので、是非この記事を専門家選びの際の参考にしていただければと思います。

2 そもそもどういった専門家がいるのか?

遺言を作成する専門家といっても、そもそもどの専門家がいるのか、ぱっとは思いつかないという方も多いいしょう。

そこで、遺言作成を検討するにあたってそもそもどういった専門家がいるのかを説明していきます。

(1)弁護士

弁護士が法律の専門家ということは素人の方でもドラマや映画などでも何となくイメージが沸くと思います。

ただ、弁護士というと、遺言というよりは、争いごとを解決したり、裁判したりするイメージが強いと思います。

弁護士も遺言は当然に業務範囲です。ただ、遺言をたくさん取り扱っている弁護士もいれば、ほとんど扱ったことのない弁護士もいますので、弁護士に遺言作成をお願いする場合には遺言作成の実績のある弁護士に依頼することが無難だと思います。

(2) 司法書士

遺言作成については、司法書士も依頼を受けて作成をサポートすることができます。

司法書士というと、素人の方は「どんな仕事をしているのか、そもそもよくわからない。」という方は多いかもしれません。

司法書士は、一般的には、登記実務の専門家になります。登記とは、一般の方が触れる機会があるとすれば、父親が亡くなったあとに、父親名義の不動産を母親名義に変えるなどの場合などです。「不動産の名義変更」という言葉は聞いたことがあると思いますが、ここでいう「名義」というのは不動産の所有権が誰のものかを示す「登記」の名義を意味しています。あとは、会社を設立するような場合には、会社の「法人登記」を法務局に申請する必要があるのですが、このような法人登記を申請するのも司法書士の専門的な業務になります。

では、遺言はどうかというと、司法書士の中で業務として取り扱っている人は、私の実感としてはそんなに多くない印象です。ただ、相続や遺言作成業務にも力を入れてやっている司法書士の方もいるので、そのような司法書士の方であれば遺言作成のサポートをお願いすることはできます。

(3) 行政書士

行政書士は、一般的には、役所などの行政庁に申請する書類を作成する専門家になります。例えば、飲食店に営業に関する風営法の許可申請、外国人の方の在留許可申請、建設業に関する建設業許可などが典型的ですが、その他にも様々な許可制申請業務があります。

行政書士の中で、遺言作成や相続業務を業務分野として取り扱っている人は全体としては少数派ですが、中には遺言作成や相続業務を専門的に扱っている行政書士の方もいらっしゃいますので、遺言作成業務を積極的に取り扱っている行政書士には遺言作成も依頼することができます。

3 遺言作成はどの専門家に頼むべきか?

(1)弁護士に頼むべき遺言

弁護士に頼むべき遺言は、ズバリ、揉める要素ある遺言です。

例えば、①遺言で相続させようとしている子供達同士が仲が悪いケース②一部の相続人に多くの割合の財産を相続させる遺言の内容にする結果、他の割合が少ない相続人が不満を持ちそうなケース③再婚している人が遺言を作成する場合に、今の配偶者と以前の配偶者のとの間でそれぞれ子供がいて、子供たちが疎遠なケース④既に相続人の一人に多額の生前贈与などをしており、遺言内容のバランスをよく考える必要があるケース⑤会社経営者など、事業承継など専門的な法的なことも考えながら遺言内容を考える必要があるケース⑥その他、複雑な背景や事情があるケースなどの場合には、法律の専門家である弁護士に依頼すべきでしょう。

ただ、この場合でも、遺言作成の実績があり、相続や遺言作成業務に実績がある弁護士に依頼することは重要です。弁護士がいくら法律の専門家といっても、遺言作成をあまり取り扱ったことのない弁護士もたくさんいるからです。

(2)司法書士に頼むべき遺言

司法書士に頼むべき遺言は、揉める要素がなく、不動産の名義変更(相続登記)が関係する遺言です。

先ほど説明したように、司法書士は登記の専門家なので、不動産を誰かに相続させるような内容を含む遺言の場合には、遺言を作成してもらった司法書士に名義変更(相続登記)をそのまま依頼できてスムーズですし、遺言の内容も名義変更がスムーズにできるようにしっかりチェックした上で遺言を作成してもらうことができますので、お勧めです。

ただ、司法書士でも遺言作成を多数取り扱っている方は多くはないので、遺言作成にたくさんの実績があるかどうかについては、必ずチェックしてから依頼するようにしましょう。

(3)行政書士に頼むべき遺言

行政書士に頼むべき遺言は、揉める要素がなく、不動産の名義変更(相続登記)が関係しない遺言です。

例えば、遺産が預金や株だけの金融資産のみの場合などが行政書士に遺言を作成する典型的なパターンになると思います。

ただ、不動産が関係していても、行政書士に依頼していけないということはありません。相続や遺言作成を専門的に取り扱っている行政書士であれば、不動産が遺言の内容に含まれていたとしても、遺言作成をするのに何か支障があるということはありません。

司法書士に依頼するときと同じように、遺言作成に多数の実績がある行政書士の方がそもそも多くはないので、遺言作成の実績があるかどうかはしっかり調べてから依頼するようにしましょう。

結局、司法書士か行政書士かのどちらに依頼するかは、遺言作成に実績のある方でありさえすれば、どちらに依頼してもいいと思います。あとは、遺言を作成する費用の金額や、相談のしやすさ、信用できそうかなども考慮して決めればいいと思います。