専門家から見た成年後見と保佐の違いとは?

1 はじめに

今回のテーマは後見制度の中でも、成年後見制度と保佐制度の違いについて、成年後見人と保佐人をたくさん扱ってきた専門家から見た場合の「違い」についてお話していきたいと思います。

福祉関係者の方でも、「成年後見」と聞けば何となくイメージが湧くという方がほとんどだと思いますが、「保佐」と聞くと、急に「?」となる方は多いのではないdせほうか。

今回のテーマは、ケアマネージャーの方や包括支援センターなどの福祉関係者の方が見ていただく「なるほど!」となるように、福祉関係者に向けてお話ししていきたいと思います。

2 成年後見とは?

成年後見とは、一言でいうと、日常生活に必要な簡単な契約ごとを全く自分で判断できないような状態の人をいいます。

例えば、寝たきりで会話ができない人や、重度の認知症で自分の名前・生年月日や自分がいる場所についても正確には答えられないような人をイメージしていただkればと思います。

このような状況の人でも、施設に入ったりするような場合には、誰かが財産を管理してあげる必要が出てきます。施設では、多額の現金、通帳・キャッシュカードを基本的に預かることができないからです。

そこで、自分のことを何もできない人に代わって財産を管理して、介護サービスなどの身の回りのサポートをする法的な立場に就く人で、家庭裁判所に選ばれた人のことを「成年後見人」といいます。

3 保佐人とは?

保佐人とは、一言で言うと、日常的に必要となるごく簡単な契約くらいは自分で何とかできるような状態の人のことをいいます。

例えば、簡単な会話のキャッチボールが最低限できたり、自分の名前や生年月日などは言える、新しく会う人も何となく顔は覚えられたりするような人をイメージしていただければと思います。

生きていく上で最低限必要な身の回りのことは自分でできるとはいえ、難しいことは自分ではできないし、財産の管理も他人のサポートなしでは適切に出来ないような状況の人になりますから、状況に応じて財産を管理したり、介護サービスなどの身の回りのサポートをする人が必要になってくる場合が出てきます。

そこで、このような人に代わって財産を管理したり、介護サービスなどの身の回りのサポートをする法的な立場に就く人で、家庭裁判所から選ばれた人のことを「保佐人」といいます。

4 成年後見人と保佐人の違いは?

先にのべたように、成年後見にあてはまる人は、他人のサポートがないと自分で何もできない人で、保佐にあてはまる人はサポートがなくても最低限のことは何とか自分でできるような人という違いはあります。

私が数多くこなしてきた実感的なところでいうと、最低限の会話のキャッチボールができて、自分のことを次回会ったときの何となく覚えているような方は「保佐」にあてはまるように人で、それすら難しい人は「成年後見」にあたる人というイメージです。福祉関係の人は、このような物差しで成年後見や保佐の判断をしていただけると一つの目安としては参考になると思います。

では、私のような専門家からみて、成年後見と保佐人で実際の業務内容について何かやることが違うことがあるかというと、実務上は「違いはほとんどない」というのが結論になります。成年後見人も保佐人も、本人の財産の管理の仕方にほとんど違いはないですし、裁判所に報告する方式もほとんど同じです。

そのため、少なくとも私などは、成年後見人として財産管理や身の回りのサポートをやっている方についても、保佐人として財産管理や身の回りのサポートをやっている方についても、あまり違いを意識してやっていることはないです。他の専門家の方もそうなのではないでしょうか。

ただ、成年後見と保佐で一番違いがでるとしたら、家庭裁判所に申立てをするときだと思います。家庭裁判所に申立てをするときは、成年後見の場合には、成年後見に該当する内容の診断書が必要ですが、保佐の場合には保佐に該当する内容の診断書に加えて本人の同意が必要になってきます。つっまり、成年後見の場合には、本人が「財産を他人に管理されるのはいやだ!」と反対していても成年後見人を無理矢理つけてしまうことが可能であることに対して、保佐の場合には、本人の意思尊重の観点から、本人が他人に財産管理されることに反対している場合には、無理に保佐人を就けることはできないのです。

4 まとめ

このように、家庭裁判所に申立てをする場合には、成年後見と保佐に大きな違いはあるのですが、いざ成年後見人と保佐人がついてからはほとんど違いがない、ということが専門家から見た場合の成年後見と保佐の違いなのかなと考えています。