遺言作成を弁護士に頼むと高いのか?

1 はじめに

今回はこれから遺言を作成を依頼しようとしている一般の方向けの記事になります。

遺言作成を、どのような場合にどの専門家に頼むべきかというテーマについては、前の記事を参考していただければと思います。なお、ここでいう「遺言作成」とは「公正証書遺言の作成」を前提にしてお話します。

遺言作成を依頼する専門家は、主に、弁護士、司法書士、行政書士になってくると思いますが、それぞれの専門家に依頼した場合の費用感については、そもそも誰に頼むかという話の前にまず知っておきたいという方が多いと思います。

そこで、今回は、それぞれの専門家に依頼した場合の費用がどのくらいか、そして、やはり弁護士に頼むと費用はお高いのか!!?という裏話までしていきたいと思います。

2 弁護士に依頼する場合の遺言作成費用

弁護士に遺言作成を依頼する場合には、安いと10万円から20万円で、高いと100万円を越える場合もあります。

弁護士が遺言作成の依頼を受ける場合には、遺言の内容が複雑か簡単なものか、財産の金額などによって決めることが多いです。

弁護士に依頼すると高いイメージを持たれることもありますが、典型的なケースだと10万円から30万円の範囲に収まることがほとんどかと思います。

一方で、あまり多くないですが、財産の金額が数億を超えてくるような場合で、かつ、遺言の内容も典型的なケースではない場合には100万円を超えることもあります。

弁護士が遺言作成の費用を決める場合には、「財産の金額の何パーセント」という基準で決定することもありますので、財産の金額が多ければ多いほど高額になる可能性があります。

ちなみに、私も財産の金額の何パーセントという形で遺言作成費用を決めることが基本ですが、遺言執行者に指定してもらえる場合には、遺言執行者の報酬として将来的に費用をいただけることから、最低金額の10万円でお受けしたりしています。

3 司法書士・行政書士に依頼する場合

司法書士や行政書士に依頼する場合には、10万円から20万円程度の範囲が多く、100万円を超えるような費用になることはほとんどないといっていいでしょう。

私の知り合いの行政書士や司法書士も、一律に10万円から20万円の範囲で設定している方も多く、弁護士のように財産の金額や遺言内容の複雑さなどによって費用を変えるということをしている方はほとんどいないと思います。

弁護士に遺言作成を依頼する場合には、遺産が高額で、かつ、典型的な遺言の内容でないような場合には費用が100万円を超えるようなこともあることを考えると、はやり司法書士や行政書士に依頼する場合によりは、弁護士に依頼する方が高い!というのは事実だと思います。

4 なぜ弁護士に遺言作成を頼むと高いのか?

先ほども話したように、典型的な遺言で財産の金額も高額でないような場合には、弁護士に遺言書を頼んでも、司法書士や行政書士に頼んでも、費用はどちらも10万円から20万円でそこまで変わりませんが、財産の金額が高額な場合や、遺言の内容が典型的でない複雑な場合には、司法書士や行政書士よりも費用が高くなります。

では、なぜ財産の金額が高額だったり、遺言の内容が複雑だったりすると弁護士費用が高くなるのでしょうか?

これは、私なりの考えのなので、これが絶対に正しいということではないという前置きをした上でお話しします。

ずばり、弁護士は遺言を作成して、作成した遺言の内容にミスがあって損害が発生したような場合には、弁護士が責任をとらないといけないからです。そして、弁護士は基本的に弁護士賠償保険に加入しており、遺言作成に法的なミスがあって損害が発生した場合には、保険によって依頼者などに賠償できるようになっています。

一方で、司法書士や行政書士は、遺言作成業務は一般的には専門業務外とされてますので、遺言の内容に何かミスあっても責任をとることができません。司法書士などは、相続登記手続の場面に伴う遺言作成しか本来は相談にのったり、作成できないとされており、高度な法的な判断が含まれる遺言作成をすることができないとされているのです。また、行政書士も、典型的な簡単な遺言の作成のみすることができ、司法書士と同様に、高度な法的判断が含まれる遺言作成をすることができないとされています。そのため、仮に、法的な落ち度があっても、責任をとることが前提とされていないのです。

弁護士が遺言を作成するときに、財産の金額や遺言の複雑さを費用において考慮するのは、万が一、ミスがあって損害賠償責任が発生することがあったような場合には、財産の金額が多ければ多いほどリスクが大きいですし、遺言の内容が複雑であればあるほどミスが起きやすくリスクも大きいからです。司法書士や行政書士や、何かミスがあっても責任までとることは予定されていないため(要は、遺言を作ったらそれで終わり)、費用が弁護士よりも抑えられているということです。

この記事を読んだ方は、万が一のときに備えて、少し高くても弁護士に依頼する方がいいと考える方もいるかもしれません。しかし、例えば、財産の金額も1000万円以内などそこまで多くなくて、「全財産を妻に相続させる」といった単純な遺言を作成することを考えているような方は、どの専門家に依頼しても遺言作成でミスは起こりにくいので、行政書士や司法書士に依頼しても全く問題ないです。むしろ、相談しやすい行政書士や司法書士がいるのであれば、必ずしも弁護士に依頼する必要はないと思います。