後見申立をスピーディーに行うポイント

1 はじめに

わたしがこれまでに数十件以上の後見申立てを行ってきましたが、中には急いで後見人をつけなければいけないケースがあります。

例えば、自宅に一人暮らしの高齢者が既に認知症が進んでおりお金の管理も全く出来ていない状況だったりで第三者のサポートがないと生活それ自体が成り立たないケース、入院をきっかけに速やかに施設入所しないといけないが財産管理などを行ってくれる親族がいないケース、同居の親族からネグレクトや経済的な虐待を受けているケースなどがあります。

2 成年後見用の診断書を速やかに依頼する

後見申立てには、後見申立専用の書式で医師に診断書を書いてもらってて裁判所に提出する必要があります。医師によっては診断書の作成に時間がかかったり、また、人によっては診断書を書いてもらクリニックから探す必要があったりします。そのため、担当のケアマネさんを通じてまずは医師に後見専用の診断書を速やかに作成してもらうことがポイントになります。

3 登記されていないことの証明書及び戸籍謄本・住民票を速やかに取り寄せる

後見申立てには、登記されていないことの証明書を法務局で取得して裁判所に提出する必要があります。また、被後見人本人の住民票や戸籍謄本も取得する必要があります。私がスピーディーに後見申立てをするために注意していることは、前述したように、医師の診断書ができあがるのを待っている間に、これらの必要書類の取得を同時並行に進めて時間のロスをなくすことです。これらの書類を取得するにも、最短でも1週間前後かかります。

4 後見人候補者を指定する

申立書の中で後見人候補者を記載する箇所があります。必ずしも後見人候補者を記載・指定する必要がありませんが、後見人候補者を指定する方が明らかに後見人選任の審判が早く出ます。といいますのは、候補者を指定しない場合には、裁判所が後見人を一から選定するのに時間を要するからです。例えば、弁護士が後見人として適切だと考えられる事案の場合には、弁護士会に照会するなどして候補者を弁護士会に選んでもらい、さらに選ばれた弁護士が記録を閲覧する過程を経て初めて後見人が選ばれることになります。私が最近経験した事案ですと、後見人が選ばれるまでに2~3か月も要した事案もあります。そのため、例えば、申立てを代理で行った弁護士などがそのまま候補者として記載しておくと後見人の選任されるまで時間が短縮できるケースが多いです。

5 裁判所に上申書を提出する

最後に、後見申立ての書類が全て整った段階で一番大事なポイントをお伝えします。それは、特に後見人を急いでつける必要がある事情を記載した「上申書」という形で裁判所に申立て書類と一緒に提出することです。特に急いで後見人を付ける事情を記載した上で、一刻も早く後見人を付けたい旨を上申すると、裁判所も通常よりも明らかに早く後見人選任の審判を出してくれる印象です。少なくとも、私が申立てをよく行う川崎や横浜は考慮して早く後見人選任の審判を出してくれます。

6 最後に

私が、上記のポイントを意識してスピーディーに申立てをした結果、申立ての準備から後見人選任まで2週間ほどで選任されたケースもあります。この事案では、特に急ぐ事情があったことから、後見申立てをした翌日には裁判所が後見人選任の審判を出してくれました。

後見申立ては、市長申立てや区長申立てに頼ると半年から1年以上がかかってしまうので、とてもじゃないけど急いで後見人をつけないといけないケースでは現実的ではないという福祉関係者の声をよく耳にします。急いで後見人をつける必要があるケースの場合に少しでも上記のポイントがお役立てると幸いです。